医療脱毛の痛みやリスクに対するイメージを一気に覆した話題のマシンこそ、半導体を利用したマシン「ダイオードレーザー」です。
この記事では、医療脱毛に注力しているドクターの立場から、ダイオードレーザーの特徴について丸裸にしていきます。
種類や効果、回数、仕組み、ダイオードレーザーがおすすめできる人はもちろん、エビデンスなども紹介しますので、ぜひお役立てください。
ダイオードレーザーは全身脱毛に効果的

そもそもダイオードレーザーとは、半導体に電流を流すことで発振するレーザー機器のひとつ。
755nm~810nmの波長を持ち、医療脱毛に使用されるマシンです。
濃く太い毛はもちろん、薄く細い毛、色素沈着のある部分へのアプローチも可能なため、全身脱毛に効果的です。
ダイオードレーザーで脱毛が完了するメカニズムとしては、近赤外線によって毛根や毛乳頭、バルジ領域にアプローチし、破壊するというもの。
弱い出力で繰り返し照射していく「蓄熱式脱毛」と強い出力で1回ずつ照射していく「ショット式脱毛」の2パターンがあり、部位によって使い分けできる点がダイオードレーザーの強みです。
また、アレキサンドライトレーザーやYAGレーザーと比べて光の量を細かく調整できるため、痛みに配慮しながら効果的なアプローチができるというわけです。
「ダイオードは効果的かつ快適」という研究結果も出ている

ここで、800nmのダイオードレーザーと1064nmのNd:YAGレーザーの脱毛効果について比較した論文を抜粋します。
ダイオードレーザー | Nd:YAGレーザー | |
施術時の痛み (1回目) | 6.97 | 6.17 |
施術時の痛み (2回目) | 5.48 | 6.69 |
施術時の痛み (3回目) | 5.76 | 7.45 |
施術時の痛みについて比較したところ、ダイオードレーザーの方が痛みを感じにくいことが判明しました。
また、毛髪の平均毛径減少量と再成長率、毛髪の減少率を比較した項目では、以下のような結果が現われています。
ダイオードレーザー | Nd:YAGレーザー | |
平均毛径減少量 | 2.44μm | -0.6μm |
再成長率 | 61.93μm/日 | 59.84μm/日 |
毛髪の減少率 (初回) | 60.09% | 41.44% |
毛髪の減少率 (2回目/4週間後) | 78.56% | 64.50% |
このような結果から、「中国人女性の脇脱毛において、ダイオードレーザーはNd:YAGレーザーよりも高い効果を示し、より快適である」とわかります。
中国人女性を対象とした実験ですので、アジアの女性にとって大いに参考となるでしょう。
つまり、「ダイオードレーザーでは痛みに配慮された施術が可能であり、高い効果も見込める」というわけです。
熱破壊式と蓄熱式の大きな違いは「打ち方」

熱破壊式ダイオードレーザー(HR)=ショット式
熱破壊式ダイオードレーザー(HR)は、1回1回照射していくショット方式です。
ほかのレーザーと同様、毛乳頭や毛母細胞など、毛の成長をつかさどる組織にアプローチできる仕組みを備えています。
脱毛のメカニズムとしては、レーザー光が毛の色素(メラニン)に吸収され、熱エネルギーを発生させる仕組みによって毛根が破壊される…というもの。
毛根が破壊されれば新たに毛が生えにくくなるため、永久減毛の効果が期待できます。
有名な機種としては「ライトシェアデュエット」や「ジェントルレーズ(プロ)」「ジェントルマックス(プロ)」などが挙げられます。
蓄熱式ダイオードレーザー(SHR)=連続照射式
蓄熱式ダイオードレーザー(SHR)は、低出力で何度か重ねて照射していく方式。
もちろん蓄熱式も毛乳頭や毛母細胞など、毛の成長をつかさどる組織へ熱を加える仕組みを備えています。
低出力でじっくり熱を与えていく仕組みのため、痛みに配慮した脱毛が叶います。
2022年時点では、医療レーザーの中でもっとも痛みに配慮されたレーザーマシンだと言えるでしょう。
永久減耗の効果が期待できるほか、熱破壊式と比較して幅広い肌質に対応できる点も特徴です。
熱破壊式と比べて新しいのですが、「ソプラノアイスプラチナム」や「ハヤブサ」など、複数の機種が登場しています。
ちなみに自社開発した「ヴィーナスワン」も蓄熱式ダイオードレーザーで、アジア人にとって効果的な設定値を採用しています。
熱破壊式と蓄熱式、2つの違いは打ち方にある
熱破壊式(HR)と蓄熱式(SHR)は照射方式が違います。
照射方式が異なることでどのような違いが出るのか、詳しく見てみましょう。
熱破壊式(HR) | 蓄熱式(SHR) | |
ターゲット | 毛根と毛包 | 毛根と毛包 |
痛み | やや痛い | マイルド |
施術時間 | 照射のお休み時間が必要なため、やや時間がかかる | 連射が可能なため、従来のショット式の半分で施術可能 |
効果 | 照射後1週間前後で実感しやすい | 熱破壊式と比べてゆっくり抜ける |
向いている毛質 | 産毛から硬い毛まで | 産毛から硬い毛まで |
向いている肌質 | 普通肌/敏感肌/ アトピー/ほくろ | 普通肌/日焼け肌/色黒肌/ 敏感肌/アトピー/ほくろ |
料金相場 | 蓄熱式に比べて高額 | 熱破壊式に比べて低額 |
それぞれターゲットは同じですが、蓄熱式の方が施術時間が短く、痛みもマイルドだということがわかりますね。
また、蓄熱式脱毛の方がさまざまな毛質、肌質、肌色にアプローチできるという点も大きな違いでしょう。
こちらの表を見て、「蓄熱式の方が安いのはどうして?」と感じた方もいるかもしれません。
そもそも、どうして医療脱毛の料金が高めなのかというと、マシンのメンテナンス費用がかかるためです。
とくに熱破壊式の脱毛器はフラッシュランプや冷却ガスを交換するコストや手間がかかるため、施術の料金を抑えることが難しい傾向にあります。
その点、蓄熱式のダイオードレーザーは定期的なダイオードの交換が不要であり、メンテナンス費用の削減が可能です。
このことから、蓄熱式脱毛はお客さま1人ひとりにお支払いいただく額を大幅に抑えることができるのです。
そのほかの違いやメリット・デメリットについてはこちらの記事で解説していますので、あわせて参考にしてください。
ダイオードレーザーの実力は、アレキサンドライトやYAGにも劣らない!

残念ながら、「ダイオードレーザーは効果がない」「ほかのレーザーマシンに劣る」といった意見を見聞きします。
このような印象があるのは、熱破壊式と蓄熱式では照射方式が異なるためです。ターゲットが異なるからではありません。
組織名 | 役割 |
毛乳頭 | 毛根の中央にあり、毛母細胞に指令や栄養を送る役割を持つ |
毛母細胞 | 毛乳頭から栄養を受け取ったり、細胞分裂したりして毛の成長を促す |
バルジ領域 | 毛乳頭と毛母細胞を包む毛包の中にあり、発毛の指令を出す |
脱毛では、上図で挙げた部位を中心にアプローチしていきます。
熱破壊式でも蓄熱式でも、ターゲットとする部位は同じで、毛乳頭や毛母細胞などの「毛根」やバルジ領域がある「毛包」に働きかけます。
熱破壊式では高出力で1回1回照射していきます。
高出力な分、毛根がポンッと飛び出す「ポップアップ現象」が起こることもあり、施術者も施術を受ける方も「毛が目に見えて抜けた」と実感しやすいのです。
一方の蓄熱式では低出力で複数回照射していきます。
じっくり熱を加えていくため、前述した「ポップアップ現象」も起こりにくく、「目に見える変化が少ない」と感じやすいのです。
そのため、「蓄熱式=即効性がない」と思われやすいのですが、「ポップアップ現象」の有無は効果に直結しません。ただの勘違いというわけです。
蓄熱式はメラニン色素が薄い産毛にも届きやすく、硬い毛にも効果を発揮しますので、脱毛効果が低いというわけではないのです。
このような理由から、「ダイオードレーザーは効果なし」「アレキサンドライトやYAGに劣る」というのはウソ、ということです。
ダイオードレーザー脱毛の人気機種一覧

ダイオードレーザー脱毛で使用される人気機種としては、下図のとおりです。
タイプ | 機種 |
熱破壊式ダイオードレーザー | ・ライトシェアデュエット ・ジェントルレーズ(プロ) ・ジェントルマックス(プロ) ・ベクタス |
蓄熱式ダイオードレーザー | ・ヴィーナスワン ・ソプラノアイスプラチナム |
熱破壊式+蓄熱式ダイオードレーザー | ・クリスタルプロ ・メディオスターモノリス ・メディオスターNeXT PRO |
クリニックによって導入しているマシンが違いますので、それぞれの特性を理解した上で選ぶことをおすすめします。
医療レーザー機器についてより詳しくまとめたページもありますので、ぜひ参考にしてください。
ダイオードレーザー脱毛は、あらゆる人に効果的

一方で、蓄熱式ダイオードレーザーはさまざまな肌質・毛質の人に向いています。
日焼け肌や色黒肌、ほくろがある部位のほか、アトピーなど敏感肌体質の方でも選びやすい点が大きなメリットだと言えるでしょう。
また、レーザーの熱や痛みが心配な方、施術時間を短縮したい方にも蓄熱式ダイオードレーザーがおすすめです。
一方、熱破壊式ダイオードレーザーの場合、産毛よりも剛毛が気になる人、毛量・毛の太さが特に気になる人に向いているでしょう。
ただし、蓄熱式ダイオードレーザーに比べて痛みを感じやすいため、冷却機能やジェルの有無についても確認しておくことをおすすめします。
痛みが心配な人はダイオードレーザーがおすすめ

半導体に電流を流すことで発振するダイオードレーザーを用いた医療脱毛は、痛みに配慮しながら効果的な脱毛ができるという点で注目を集めています。
ダイオードレーザーの種類は、熱破壊式と蓄熱式の2種類。
熱破壊式も蓄熱式も毛根(毛乳頭や毛母細胞)、毛包(バルジ領域)にアプローチしていきますが、出力方式が違います。
熱破壊式は1回1回高出力で照射していきますが、蓄熱式は低出力で複数回アプローチしていきます。
- 熱破壊式:産毛よりも剛毛が気になる人や毛量、毛の太さが特に気になる人におすすめ
- 蓄熱式:さまざまな肌質・毛質の人におすすめ。日焼け肌や色黒肌、ほくろがある部位のほか、アトピーなど敏感肌体質の方でも選びやすい
毛質や肌質、施術に対する希望などによって向いている機種が違ってくるので、それぞれの特性を理解した上でクリニックを選びましょう。
当サイトでは、医療レーザー機器や施術について専門的かつ忖度のない情報を発信しています。
アレキサンドライトレーザーやYAGレーザー、ピコレーザー、IPLについても取り上げていますので、ぜひお役立てください。