フォトフェイシャルに使用される「IPL」は、「レーザーよりも痛くない」「美肌になれる」「自宅でも脱毛できる」と脱毛の分野でも注目を集めています。
主にエステで採用されている方式のため、「光脱毛は効果が低い」と考えている方も多いかもしれません。
しかし、「医療IPL脱毛は、医療レーザー脱毛と同等の効果が期待できる」と言われることもあり、米国ではよく使用されている脱毛方式です。
では、なぜエステサロンや家庭用光美容器で使用されるIPLは効果が低いのでしょうか。
この記事では、このような疑問を踏まえて、医療IPL脱毛の仕組みや効果、エビデンスについて解説します。
医療IPLも医療レーザーも、毛が抜ける仕組みは同じ

IPL(Intense Pulsed Light/インテンス・パルス・ライト)は、肌質改善効果や脱毛効果が期待できる光。
レーザーに次いで注目されている脱毛方法ではありますが、どうしてIPLを当てることで毛が抜けるのでしょうか。
そもそもIPLとは、多波長で不安定かつ、ほかの波長に干渉されにくいという特徴を持つフラッシュランプ光源です。
光脱毛では下記どちらかの方式が採用されていることが多く、光の波長や照射時間などを調整しながら施術していきます。
・レーザー方式:波長 750 nm 前後,照射エネルギー密度 10 ~ 20 J/ cm2
・キセノンフラッシュ方式:波長 560 ~ 1200 nm,照射 エネルギー密度 20 ~ 40 J/ cm2
IPL脱毛では、毛に含まれるメラニンに光が吸収されることで、毛包およびバルジ領域に存在する毛の幹細胞などが破壊され、毛が抜けていきます。
つまり、毛が抜ける仕組みは医療IPL脱毛と医療レーザー脱毛も同じだということです。
医療機器として承認されている近年のIPL機器には「レーザー脱毛と同等の効果が得られている」という報告もあり、長期的な脱毛効果にも期待できます。
これはあくまでも医療機器として承認されているIPLマシンについてのお話。
サロンや家庭用光美容器に使われているIPLの場合は「低出力キセノンフラッシュ」が使用されており、毛の成長をつかさどる組織を破壊する効果はありません。
医療用とそれ以外のIPLマシンではメカニズムが違うので、騙されないように気をくださいね。
レーザー脱毛とIPL脱毛の効果について優劣をつけるのは難しい

レーザー脱毛 | IPL脱毛 | |
光の種類 | ・ダイオードレーザー ・アレキサンドライトレーザー ・YAGレーザー | IPL(Intense Pulsed Light / インテンス・パルス・ライト) |
安全性 | 冷却装置が搭載されたもの、低出力で照射する蓄熱式のものが多く、安全性に配慮されている | 近年のIPL装置には冷却機能やフィルターなどが搭載されており、安全性に配慮されている |
効果 | ◎ | ○ |
医学的 根拠 | 効果について数多くのエビデンスが報告されている | レーザー脱毛に比べてエビデンスが不足している |
レーザー脱毛とIPL脱毛の違いは、上図の通り。
IPL脱毛の方が痛みが少なく安全性も高いイメージをもっている方も多いかもしれませんが、それぞれを比較した論文は少なく、優劣をつけるのは難しいと言えます。
旧式の場合、冷却装置がないもの、出力が安定しないものがあり、火傷などの重大なリスクもありますが、近年のIPL装置は安全性にも十分配慮されているため、「レーザーと比べて危険」ということもありません。
ただ、IPL脱毛の場合は産毛への効果が見込めないため、脱毛したい部位に合わせて施術を受けるのがおすすめです。
家庭用IPL脱毛は安全性も効果も低い

医療用IPL | 家庭用IPL | |
安全性 | ◎ | × |
効果 | ○ レーザー脱毛と同等の効果が得られたという報告もある | × 抑毛効果は期待できるが、やめれば元通りになってしまう |
メカニズム | 毛のメラニンに光を当て、ダメージを与えることで毛の成長を抑えていく | 毛包のアポトーシス誘導が起こり、毛の成長が抑えられる可能性がある |
医療用IPL脱毛と家庭用IPL脱毛の違いは上図のとおりです。
医療用IPL脱毛の場合、医師や看護師が照射するため、十分安全性に配慮した施術が可能です。
一方、家庭用IPL脱毛の場合は自分または家族がマシンを取り扱うことから、安全性には期待できないでしょう。
火傷や赤み、あざなどのリスクのほか、照射漏れや重ね打ちによるムラや肌ダメージ、硬毛化などが起こることもあります。
また、家庭用IPLの場合は脱毛の効果もありません。
期待できるのは毛の成長スピードが穏やかになる抑毛効果のみで、やめてしまえば毛の成長率も元通りになってしまいます。
上記のことから、家庭用IPL脱毛はおすすめできません。脱毛を考えているなら、医療用IPL脱毛やレーザー脱毛を選びましょう。
もし「痛みが心配」という場合、蓄熱式ダイオードレーザーによる脱毛もおすすめです。
IPL脱毛は、シミや毛穴、キメの乱れにも効果的

IPLは、以下のような症状、疾患を改善する効果も認められています。
- シミ
- ソバカス
- 肝斑
- 色素沈着
- ニキビ跡
- 毛穴の開き
- 弾力の低下
- キメの乱れ
- 毛細血管拡張
- 老人性血管腫
このように多彩な効果があり、「脱毛と同時に美肌になれる」というのがIPL脱毛の魅力のひとつ。
ただ、美肌効果を求める場合とムダ毛にアプローチする場合とでは使用されるフィルターやハンドピースが異なる場合があるため、「脱毛と同時に確かな美肌効果が得られる」と断言することはできません。
また、IPLは女性のフェイスラインなどの細い産毛には不向きです。
色素が薄い毛への反応が悪いため、「脱毛は蓄熱式ダイオードレーザーで、美肌作りはIPL治療で」といった使い分けがおすすめです。
「IPL脱毛は効果がない」と言われるのは、サロンや家庭用マシンのせい

「IPL脱毛は効果がない」と言われる理由は、IPLはレーザーに比べて出力(パワー)が低いためです。
主にエステ脱毛で使用されることから「IPL=効果が弱い」とイメージされている可能性も否めません。
たしかにエステサロンで使用されているIPLマシンは医療機器ではないため、高い効果も期待できず、安全性にも期待できません。
しかし、クリニックで採用されているIPLマシンはれっきとした医療機器です。
フィルターやハンドピースを変更することで、より高い効果を追求することもできます。
また、昨今の医療用IPLマシンには、以下のような機能が搭載されています。
・エネルギーを与える効率を高める「フォトンリサイクリング機能」
・低出力でじっくり照射していく「蓄熱モード」
・出力を補正する「リアルタイムキャリブレーション技術」
このような機能を駆使することで、ムダ毛に効率よくアプローチすることができます。
これらのことから、効果がないのはサロンや家庭用のIPL脱毛で、医療用IPLではきちんとした脱毛効果が期待できると言えます。
IPL脱毛は安全性が高いが、家庭用光美容器やサロン脱毛には要注意

IPL脱毛はサロンでも使用されている方式のため、「痛みが少ない」「安全性が高い」とイメージする方も多いはずです。
しかし、エステや脱毛サロンにおけるIPL脱毛についてはたびたび厚生労働省から注意喚起がされています。
実際、2012年度から2016年度の約5年間で、エステ脱毛による被害が680件も報告されているほどです(医療機関で受けた脱毛による被害は284件)。
エステで使用されるIPLマシンは医療用のIPLマシンよりも出力が抑えられていますが、それでも皮膚の赤みや火傷、あざなどの被害は後を絶ちません。
医療機関で行うIPL脱毛の場合はトラブルが起こらないよう配慮できますし、万一トラブルが起きてしまった場合もすぐに対処できます。
しかし、エステや脱毛サロンは医療機関ではないので、トラブルが起きてしまっても診察や治療はできません。
そのため、業務用・家庭用マシンを使ったIPL脱毛は安全とは言えません。
安全性を求めるなら医療IPL脱毛またはレーザー脱毛を受けるようにしましょう。
そもそもサロンで行われる脱毛には医師法が適用されるケースもあり、刑事訴訟法第239条の規定によって告発されるおそれもあるほどです。
このような実態を考慮して、安易な気持ちでサロン脱毛を選んでしまわないよう気を付けてくださいね。
医療IPL脱毛は、サロン脱毛より遙かに高い効果が期待できる
- IPLを当てることで脱毛効果や美肌効果が期待できる
- IPL脱毛とレーザー脱毛の違いは、使用される光の種類とエネルギー
- 家庭用IPLは抑毛効果が期待できるが、やめれば毛の成長は再開してしまう
- IPLはシミやソバカス、肝斑、毛穴の開きなどを改善する美肌効果が期待できる
- 高い効果を求めるのであれば、各施術に特化したマシンでアプローチするのがおすすめ
医療用のIPLを使った脱毛はサロン用・家庭用のIPLマシンより遙かに高い効果が期待できます。
実際、IPLを使用した脱毛で「レーザー脱毛と同等の効果が現れた」と報告されているケースも。
このほか、多彩な美肌効果が期待できるので、気になる方はぜひ医療機関でIPLの施術を受けてみてくださいね。
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