美容医療レーザーにはさまざまな種類があり、改善できる症状、期待できる効果もマシンによって違います。
このページでは、そんな美容医療レーザーの治療内容や仕組み、医学的根拠についてまとめました。
レーザーの仕組みと種類

そもそも医療レーザーとは、どこまで行っても平行な光を搭載したマシンです。
正式名称は、「Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation」。
日本語では「放射の誘導放出による光増幅」と訳されます。
人間の体の「色素」と「水分」に反応するものの2つに大別され、症状や肌の状態に合わせて使い分けできる点が特徴です。
簡単に分類してみると、上図のような種類に分けられます。
色素に 反応 | 水分に 反応 | |
使用目的 | ・医療レーザー脱毛 ・刺青やタトゥーの除去 ・シミやあざの治療 | ・シワやたるみの治療 ・ほくろやイボの治療 ・傷跡の除去 ・シミやあざの治療 |
種類 | ・アレキサンドライトレーザー ・ダイオードレーザー ・YAGレーザー ・ダイレーザー(色素レーザー) ・ルビーレーザー ・ピコレーザー | ・炭酸ガスレーザー (CO2レーザー) |
さまざまなレーザー機器が登場していますが、突き詰めるとこれらのタイプ(もしくは2つ以上の波長を搭載したマシン)に分類されます(2022年5月時点)。
出力可能な波長やピークパワーの大きさによって、もたらされる美容効果が変わってくるため、目的に応じたマシン選びを心がけることが大切です。
とはいえ、「ここまで読んでみたけど、ちょっと難しい…」と感じている方もいるかもしれませんね。
そこで以下では、医療レーザー脱毛による治療内容と仕組みについて、医学的根拠を織り交ぜながら解説していきます。
医療レーザー脱毛

クリニックで取り入れられる脱毛方法でもっとも主流なのが、医療レーザー脱毛です。
脱毛と聞くと「サロン脱毛」を連想する方も多いと思いますが、レーザー脱毛は美容クリニックや美容皮膚科などの医療機関でしか受けられません。
効果とメカニズム
医療レーザー脱毛では、永久脱毛(永久減毛)の効果が期待できます。
永久脱毛とは、数回の施術後に再生する毛の量が半永久的かつ安定的に減少すること。
どのようなメカニズムなのかと言うと、レーザーの光を毛根の黒い色素(メラニン)に反応させると、熱エネルギーが発生します。
この熱エネルギーが毛から毛嚢に伝わり、毛を再生する組織が破壊され、煩わしいムダ毛が抜け落ち、いわゆる永久脱毛が完了する、という仕組みです。
医療レーザー脱毛の場合、いわゆる永久脱毛の効果が認められているマシンも多数あります。
しかし、サロン脱毛の場合は除毛・減毛の効果しか期待できないばかりか、効果を持続させるために永久的に通わなければなりません。
使用されるマシンのタイプ
医療レーザー脱毛で使用されるマシンのタイプと機種名の例は、以下の通りです。
タイプ | 代表機種名 |
アレキサンドライトレーザー | ・ジェントルレーズ(プロ) ・ジェントルマックス(プロ) |
ダイオードレーザー | ・ヴィーナスワン ・ライトシェアデュエット(HR) ・メディオスターNeXT PRO(SHR) |
YAGレーザー | ・ジェントルヤグPRO |
ちなみにレーザー脱毛法自体の歴史はまだ浅く、アメリカFDAが永久脱毛(※)の効果を認めたのは1999年のことでした。
今ではキャンデラ社やサイノシュア社、ルートロニック社など、さまざまな企業が参入しており、レーザー機器の種類も多彩です。
また、それぞれ熱破壊式と蓄熱式に分けられ、「ジェントル」シリーズや「ライトシェアデュエット」、「ジェントルヤグPRO」は熱破壊式です。
ショット式のため、剛毛向きではありながら、日焼け肌や色黒肌などには不向きだと言われています。
一方の蓄熱式はさまざまな肌質・毛質の人に適応しやすく、痛みに配慮した施術が可能です。
代表機種で言えば「ヴィーナスワン」や「メディオスターNeXT PRO」が挙げられます。
それぞれに特性があるので、気になる方はぜひこちらもご覧くださいね。
シミ・あざの治療

シミやあざの除去を目指す場合にも医療レーザーが用いられます。
シミの場合、老人性色素斑(いわゆるシミ)、肝斑、後天性真皮メラノサイトーシス、炎症後色素沈着、脂漏性角化症などが治療の対象です。
あざの場合は、太田母斑、扁平母斑、異所性蒙古斑、血管腫、毛細血管拡張症などが対象で、保険が適用されるケースもあります。
効果とメカニズム
医療レーザーを照射することで、シミやあざを改善する効果が見込めます。
レーザーは色素に反応する仕組みを持つため、黒色や茶色、青色などのあざ(色素性皮膚病変)の「メラニン」や赤みを帯びたあざや腫瘤(血管腫)の「ヘモグロビン」にアプローチ可能です。
ただし、シミやあざの改善を目指す場合は、波長や照射時間、照射エネルギーについて考慮する必要があり、症状によって使用されるレーザー機器の種類も違ってきます。
肝斑や色素沈着に適したレーザートーニングもポピュラーになってきていますが、実は悪化してしまうケースもあり、エビデンスは不十分。
また、赤あざなど血管腫の治療においては、血流の速さや血管の太さ、血管壁の厚さ、赤血球の密度なども考慮する必要があります。
そのため、レーザー治療の知識や実績が十分な医師に任せることをおすすめします。
ちなみに、日本美容外科学会が発表している「美容医療診療指針」によると、シミ、日光黒子(老人性色素斑)に対するレーザー治療の推奨度は1。
「有効だが、長期にわたる検討や他の治療法との比較が十分ではない」という理由から、治療を希望する患者さんには強く推奨するべきだと言われています。
クリニックのホームページやブログなどを見るときは、「デメリットやリスクも含めて紹介されているか」をチェックすると医院選びの参考になるでしょう。
使用されるマシンのタイプ
シミやあざへアプローチする場合、メラニンやヘモグロビンに向かって照射することになるので、症状や色素に応じたレーザーが選択されます。
あくまでも一例ですが、使用されるマシンのタイプや機種の例は、以下の通りです。
タイプ | 代表機種名 |
ダイレーザー(色素レーザー) | ・Vbeam |
アレキサンドライトレーザー | ・ALEXLAZR |
ルビーレーザー | ・The Ruby Z1 |
炭酸ガスレーザー | ・Encore |
その他 | ・アキュライト ・synergy |
クリニックによって採用されている機種が違いますので、医院選びの際はしっかりチェックしておきたいですね。
刺青・タトゥーの除去

「若い頃入れてしまった刺青やタトゥーを除去したい」という方は、意外と多いものです。
切除手術や削皮手術、植皮手術によって除去する方法もありますが、大きなタトゥーが消せないケースや傷跡が残ってしまうリスクがあるため、レーザーで除去を目指す方法が注目されています。
効果とメカニズム
刺青やタトゥーは色素なので、医療レーザーを使って目立たなくすることができます。
メスによる切開手術を伴わないため、面積の広いタトゥーを薄くする効果にも期待できます。
レーザー光を当てることで刺青やタトゥーを薄くする効果が見込めるのは、レーザーがインクの色素に吸収されるためです。
色素に熱エネルギーが加わり、異常な色素細胞(インク)が破壊されるため、刺青やタトゥーを目立たなくなる効果が期待できるのです。
皮膚の浅いところにある色素細胞はカサブタとなって剥がれ落ち、深いところにある色素細胞はマクロファージの働きによって吸収され、体外へと排出されていきます。
ただし、赤や黄色などマルチカラーのものや、肌色のアートメイクなどは除去が難しいケースもあります。
これは、赤や黄色の色素に吸収されるレーザー光が皮膚の深層深部に到達しにくいためです。
緑や青、紫、赤、黄などのタトゥーにも適応するピコレーザーの存在も知られていますが、レーザーのメカニズムを知らないまま安易に選ぶことはおすすめできません。
墨汁や鉄、酸化チタンなど、使用されているインクによって治療の経過が違ってくるので、メカニズムについて詳しく知っていると安心できるでしょう。
使用されるマシンのタイプ
刺青やタトゥーに適応するレーザーマシンのタイプや機種の例は、以下の通りです。
タイプ | 代表機種名 |
ピコレーザー | ・エンライトンⅢ ・エンライトンSR ・PQXピコレーザー |
YAGレーザー | ・トライビーム |
刺青なのか、タトゥーなのかによっても使用される機種が異なるため、詳しくは医師に相談してみることをおすすめします。
シワ・たるみの治療

加齢や紫外線ダメージ、表情筋の衰えなどで生じるシワやたるみの治療というと、ヒアルロンやボトックスを注入する方法や糸リフトなどをイメージする方が多いかもしれません。
しかし、フラクショナルレーザー療法(FLSR)によってシワ・たるみにアプローチすることもひとつの選択肢です。
効果とメカニズム
シワやたるみにアプローチするフラクショナルレーザー療法では、水分に反応するタイプのレーザーが用いられます。
仕組みとしては、きわめて微細なレーザー光を一定の密度で照射することで熱エネルギーを与え、表皮のターンオーバーを促進するというもの。
真皮組織が収縮することによってコラーゲン生成が促され、ハリや弾力がアップする効果が期待できます。
また、肌の引き締め(タイトニング)効果のほか、ニキビ跡やザラつきを改善する効果が見込める点もうれしいポイントです。
ちなみに、フラクショナルレーザー療法は2004年に初めて報告された方法。
従来のレーザー治療では紅斑や出血、ケロイドなどの副作用やダウンタイムが懸念されていました。
しかし、微細な光を点状に照射するフラクショナル照射を取り入れることにより、安全性に配慮した施術が可能になったのです。
使用されるマシンのタイプ
シワやたるみに適応するレーザーマシンのタイプや機種の例は、以下の通りです。
タイプ | 代表機種名 |
フラクショナルCO2レーザー | ・フラクセル2 ・ペンタゴン |
エルビウムグラスヤグレーザー | ・eCO2 |
ほくろ・いぼの除去

医療レーザーを使用することで、ほくろ(母斑、黒子)やイボ(アクロコルドン)にアプローチすることも可能です。
切除縫合法・くり抜き法など、従来の施術と違ってメスを使用しないため、低侵襲な治療を求めている方にも選ばれやすい方法です。
効果とメカニズム
医療レーザー装置を使うことにより、ほくろやイボを除去する効果も期待できます。
水分に吸収されやすいレーザー光をほくろやイボに当てると、熱エネルギーに変換されます。
細胞には水分が含まれているため、レーザーのエネルギーが吸収されることで組織が蒸散。
ほくろやイボを形成していた組織が即時的に破壊され、除去が完了するという仕組みです。
平らなものだけではなく、肥大化した部分にもアプローチできるため、一考の価値があるといえるでしょう。
ほくろやイボのない健康な組織への損傷は最小限に抑えられるというエビデンスもあるので、他の治療法にハードルを感じている方にも選びやすい方法です。
使用されるマシンのタイプ
ほくろやイボアプローチする場合、以下のようなレーザー機器が使用されます。
タイプ | 代表機種名 |
CO2レーザー | ・AcuPulse |
エルビウムYAGレーザー | ・ACTION Ⅱ |
Qスイッチルビーレーザー | ・The Ruby Z1 |
なお、エルビウムYAGレーザーは、炭酸ガスレーザーの波長(10,600nm)と比べて高い水分吸収率(2,940nm)を持つマシンです。
黒い色素をもつほくろや母斑細胞母斑には、Qスイッチルビーレーザーが用いられることもあります。
取り除きたいほくろやイボの色、状態によっても適切なマシンが変わってくるため、覚えておくとよいでしょう。
目的や症状に合わせたマシン選びを!
医療レーザーは、色素または水分に吸収される性質を持っており、医療脱毛のほか、シミ・あざの治療、刺青・タトゥーの除去、シワ・たるみの治療、ほくろ・いぼの除去などの目的で選ばれています。
- アレキサンドライトレーザー
- ダイオードレーザー
- YAGレーザー
- ダイレーザー(色素レーザー)
- ルビーレーザー
- ピコレーザー
- 炭酸ガスレーザー
上記のようにさまざまなタイプがあるので、目的や症状に合わせたマシンを選ぶことが大切です。
当サイトでは、医療レーザー機器や施術について医師目線で忖度のない情報をまとめています。
興味がある方は、ぜひほかの記事にも目を通してみてくださいね。