一口に医療脱毛と言っても蓄熱式と熱破壊式脱毛の2つがあるため、どちらを選ぼうか迷う方も多いはず。
結論から言ってしまうと、蓄熱式と熱破壊式の効果の差は証明されていません。
ただ、「蓄熱式レーザーは痛みや不快感が少なく、脱毛に効果的」というように、それぞれのマシンに関する研究結果は出ています。
そこでこの記事では、クリニック選びやマシン選びの参考になるよう、蓄熱式と熱破壊式の違いについてまとめました。
「熱破壊式と蓄熱式、どちらが効果的?」「蓄熱式は効果がない?」「メカニズムの違いは?」など、医療脱毛機にまつわる疑問を抱いている方は必見です。
そもそも蓄熱式と熱破壊式の効果の差は証明されていない

レーザーを低出力で連続照射していく蓄熱式と、高出力で1回ずつ照射していく熱破壊式。
それぞれ照射方法が違うため、「どっちの効果が高いのか」「ターゲット部位が異なるのか」といった疑問を抱く方は少なくありません。
これらの疑問に関する答えですが、まだ効果の差は明らかになっていません。
というのも、蓄熱式レーザーは登場してからの歴史が浅く、効果について十分に比較された論文が少ないためです。
「蓄熱式レーザーは痛みや不快感が少ない」という研究結果もある

ただ、蓄熱式ダイオードレーザーと熱破壊式ダイオードレーザーを比較した研究結果は出ていますので、ちょっと見てみましょう。
比較項目 | 蓄熱式ダイオードレーザー (ソプラノXL/810nm) | 熱破壊式ダイオードレーザー (ライトシェアデュエット/810nm) |
毛髪減少率 | 40.7% | 33.5% |
疼痛評価 | 平均2.7 | 平均3.6 |
この2つのレーザーを6か月使用したことによる効果は、12か月後にも認められており、「どちらがより優れているのか」を判断するのは困難です。
とはいえ、「蓄熱式レーザーは痛みや不快感が少なく、脱毛に有効な方法」と考えてよいでしょう。
今後、蓄熱式レーザーと熱破壊式レーザーの有効性を比較した論文のデータは増加していくと考えられるので、引き続き注目したいですね。
蓄熱式と熱破壊式のターゲットは同じ!

「熱破壊式は毛根がターゲット」「蓄熱式はバルジ領域がターゲット」
こんな説明を見かけたことがある方もいるかもしれません。
しかし、これは誤った情報です。それぞれのターゲットについて理解するために、下記をご覧ください。
”本装置は波長 808nmと940nmのダイオードレーザを皮膚に照射することにより、毛幹、毛根のメラニンへの選択的熱作用及びその輻射熱による周辺組織の選択的破壊により、減毛を行う。
治療時の皮膚の表面温度を低下させるため、皮膚冷却部を備えている。”
こちらは、蓄熱式ダイオードレーザー「メディオスターネクストプロ」の添付文書に記載された文章です。
”GentleLase Proから発振される波長755nmのレーザー光は、メラニン色素に対して選択的に吸収されやすいという大きな特徴があります。
メラニン色素を多く含んでいる毛が光エネルギーを吸収し、熱に変換されます。その熱が毛の周囲の毛包・毛乳頭部に対して拡散することで毛の組織を破壊していきます。”
そしてこちらは熱破壊式アレキサンドライトレーザー「ジェントルレーズプロ」の製品情報から抜粋した文章です。
つまり、以下のようにどちらのレーザー光もメラニンに吸収される性質を持っており、発生した熱によって毛の生産組織が破壊され、脱毛効果が得られているということがわかります。
つまり、熱破壊式も蓄熱式も毛の成長をつかさどる部位にアプローチしており、ターゲットが違うわけではないということです。
では、蓄熱式脱毛と熱破壊式脱毛における決定的な違いは何なのかと言うと、ワンショットでダメージを与えるのか、複数回に分けてダメージを与えるのか、照射方法が違うのです。
蓄熱式はバルジ領域のみにアプローチしているわけではないので、間違って覚えないよう注意しましょう。
蓄熱式と熱破壊式の違い

先ほどもお伝えしたとおり、「蓄熱式と熱破壊式、どちらが優れているのか」という確かなデータは出ていません。
でもがっかりしないでください。
痛みや施術時間、メリットなどを比較し、自分に合った機種を選ぶことはできます。
比較項目 | 熱破壊式(HR) | 蓄熱式(SHR) |
照射の方法 | 高出力のレーザーを 1回ずつ照射 | 低出力のレーザーを 連続で照射 |
効果 | 目に見えて抜け落ち 生えにくくなっていく | ゆっくり抜けて 生えにくくなっていく |
痛みの強さ | 強い | 弱い |
照射時間 | 1秒間に 1~2回程度 | 1秒間に 10回程度 |
肌質・肌色 | 肌が弱い方や 日焼け肌には不向き | 幅広い肌質・ 肌色に向いている |
剛毛への効果 | ◎ | ○ |
産毛への効果 | × | ◎ |
ざっくりまとめると、熱破壊式レーザーは剛毛に悩む方向け、蓄熱式レーザーはオールマイティな効果を求める方向けだと言えるでしょう。
熱破壊式と蓄熱式のメリット・デメリット比較表
ちなみに、それぞれのメリット・デメリットについては以下の通りです。
メリット | デメリット | |
熱破壊式(HR) | ・導入クリニックが多い ・医学的根拠がある | ・料金が高い ・痛みがある ・肌質に左右される ・施術時間が長い ・産毛には反応しにくい ・白髪には反応しない |
蓄熱式(SHR) | ・料金が安い ・痛みが少ない ・肌質に左右されにくい ・肌へのダメージが少ない ・施術時間が短い ・産毛にも反応しやすい | ・導入クリニックが少ない ・白髪には反応しない |
もっと知りたいという方は「医療脱毛のリスクとデメリット」をチェックしてください。
「蓄熱式脱毛は効果がない」と言われるのは、使い方が難しいから

ここまで蓄熱式脱毛、熱破壊式脱毛を比較してきました。
しかし、「やっぱり蓄熱式脱毛は抜けにくいんでしょ?」「効果が高いのは熱破壊式でしょ?」などと考えていませんか?
実際、「蓄熱式脱毛は抜けがよくない」と評価する医師もいます。
どうしてかというと、従来の蓄熱式ダイオードレーザーは使い方が難しく、誤った使い方が浸透してしまったためです。
そもそも脱毛の効果(ジュール数)を左右するのは、ピークパワー(最大出力)とパルス幅(照射時間)です。
そもそも脱毛に効果的な単位は、30ms~40ms(0.03~0.04秒)。
つまり、本来であれば出力を上げ、照射時間を短くすることで蓄熱式ダイオードレーザーによる十分な効果が見込めます。
しかし、「出力を上げずに照射時間だけを上げてしまう」という誤った使用方法が出回り、十分な効果が得られなかったことで「蓄熱式ダイオードレーザーは効かない」という誤解が生まれてしまったのです。
つまり、脱毛理論に基づいて蓄熱式ダイオードレーザーを正しく使用するのであれば、「効果がない」「抜けない」というトラブルは起こりません。
脱毛理論や仕組みについてはこちらの記事でより詳しく解説していますので、ぜひチェックしてください。
脱毛で失敗しないためには、すべての情報を鵜呑みにしないことが大切
- 蓄熱式と熱破壊式の違いは、ターゲットではなく照射方法
- 低出力+複数回に分けてアプローチしていくのが蓄熱式脱毛
- 高出力+ワンショットでアプローチしていくのが熱破壊式
- 蓄熱式と熱破壊式の効果の差については確かなエビデンスが出ていない
- 正しい脱毛理論に基づいて照射すれば、蓄熱式でも十分な効果が見込める
蓄熱式ダイオードレーザーは比較的新しいレーザー装置なので、誤った情報も出回ってしまっています。
脱毛で失敗しないためには、すべての情報を鵜呑みにしないことが大切です。
当サイトでは、医療レーザー機器やその仕組み、効果、脱毛理論など、さまざまな情報を発信しています。
正しく確かな情報を見分けるための知識をつけ、クリニック選びやマシン選びに役立ててくださいね。
医療脱毛を検討している方は、ぜひほかのページも覗いてみてください。