ピコレーザーは、従来のレーザーマシンと比べて遙かに短い速度で発振できると話題のマシン。
その名の通り、1兆分の1秒、つまりピコ秒で照射可能なレーザー装置です。
このページでは、そんなピコ秒レーザーで可能な治療や効果、リスクについてエビデンスを交えながら解説していきます。
ピコレーザーは1兆分の1秒の速さでアプローチできるマシン

ピコレーザーは、ピコ秒(1兆分の1秒)で発振可能なレーザー装置のこと。
人間のまばたきがおよそ0.1秒ですが、その1000億分の1秒という速さで照射可能です。
米国サイノシュア社の「PicoWay(ピコウェイ)」や「 Pico Sure(ピコシュア)」、米国キュテラ株式会社の「エンライトンSR」が有名ですね。
従来のマシンと比べて1パルスあたりのレーザーのエネルギー強度が高いので、Qスイッチレーザーなどでは砕くことが難しい粒子にもアプローチできます。
エネルギー強度が高くなると照射時間を短縮できるため、周辺への火傷や痛みなどのリスクも低減。
施術後のメイクや洗顔など日常生活の制限が少ないため、ダウンタイムの少ない治療を求めている方に人気です。
シミやほくろ、イボ、ニキビ、ニキビ跡、顔の赤み、あざ、タトゥーなどさまざまな症状に働きかけられる点もメリットでしょう。
また、以下3つのモードで発振できることもピコレーザーの特徴として挙げられます。
- ピコトーニング
- ピコフラクショナル
- ピコスポット
しかし、「エビデンスが不十分」「肝斑の治療は難しい」といった懸念点も。
そこで以下では、それぞれの治療法について詳しくまとめました。
ピコトーニングはシミや肝斑、くすみ、毛穴の開き、赤ら顔に効果的

ピコトーニングとは、従来のナノ秒QスイッチNd:YAGレーザー(1,064nm)やQスイッチアレキサンドライトレーザー(755nm)を低フルエンスで照射するアプローチ方法。
簡単に言うと、低出力で広めに、かつ継続的にレーザーを当てていく方法です。
フルエンスとは単位面積あたりの出力(パワー)のことを指し、フルエンスが低くなるほど効果や副作用が減ります。
その分照射時間を長くし、じっくりアプローチしていくのがピコトーニングの仕組みです。
ピコトーニングの施術は、主にシミや肝斑、くすみ、毛穴の開き、赤ら顔などに効果的だと言われています。
ピコトーニングで肝斑や色調、キメが改善したという報告も

ここで、ピコトーニングについてのエビデンスを見てみましょう。
5%ハイドロキノン外用療法を行っている44歳の女性に1,064mn波長のレーザートーニング治療を実施したところ、2~3週間ごとに5回治療したあと、肝斑が改善しました。
さらに肝斑や顔全体の色、肌のキメ、質感を改善したいという40歳女性に532nm、785nm、1,064nmの3波長で2回の治療を実施したところ、1か月後に色調や肌のキメの改善が認められました。
このような結果から、ピコ秒レーザーによるトーニング治療は、より効果的である可能性が高いと言われています。
また、老人斑(シミ)がある217名のうち、113名の改善が認められました。
改善が認められなかったのは56名でしたが、副作用として老人斑(シミ)が悪化した人はいませんでした。
雀卵斑(そばかす)の場合、対象者22名のうち、13名が改善。平均治療回数は3.8回で、少ない治療回数で効果が得られることが分かっています。
ただし、肝斑は増加してしまう恐れがあるため、1か月から2か月開けてから治療することが望ましいという意見もあります。
以上のことから、いくらエビデンスが十分なピコトーニングでも、正しい知識を持つ医師のもとで治療を受けるのが望ましいと言えるでしょう。
ピコフラクショナルはシミやたるみ、傷跡、色素沈着に効果的

ピコフラクショナルは、ピークパワーの高いレーザー光を点状に照射していくアプローチ方法。
圧力差によって生じた泡が弾ける「キャビテーション」と、荷電粒子を含む「プラズマ」が生み出されることで衝撃波が起こります。
この衝撃波によってシミやたるみ、傷跡、色素沈着などに働きかけていくというのがピコフラクショナルの特徴です。
ほかのフラクショナルレーザー療法と違って皮膚への損傷が少ないため、ダウンタイムの少ない治療を探している方も選びやすい方法です。
ピコフラクショナルでニキビやハリ感が改善したという報告も

そもそもピコレーザーを使うフラクショナルレーザー療法は、ややエビデンス不足です。
というのも、2015年に初めて報告された治療法であるため、どんな照射出力が適切なのか、波長や集光方法はどう設定したらよいのか、といった確かな治療方法が明らかになっていないのです。
ただし、ピコフラクショナルによってニキビに変化が見られた、という報告はあります。
最後の治療から3か月後に外観と質感に改善をもたらしたそうです。
コラーゲンの増加や伸び、密度が増加することから、肌のハリ感をアップする作用にも期待できるでしょう。
一方で、衝撃波が主体となるので、小ジワの改善には効果的でもタイトニング(肌の引き締め)作用は乏しい、という研究結果も。
確かな効果を求めるのであれば、Qスイッチレーザーや炭酸ガスレーザーを用いたフラクショナルレーザー療法を選ぶことをおすすめします。
ピコスポットはシミ、そばかす、ホクロ、あざに効果的

ピコスポットは、ピコ秒レーザーを1回1回照射していくアプローチ方法。
「シミの取り放題メニュー」などに使用されることも多く、注目されていることは間違いありません。
ピコ秒レーザーの波長はメラニン色素に反応するため、シミ、そばかす、ホクロ、あざ(ADM・太田母斑)などを改善する効果が見込めると言われています。
他のロングパルスレーザーや光治療では根治が難しいと言われますが、ピコ秒レーザーは真皮まで到達するため、高い効果が期待できるのです。
ピコスポットはADMにも効果的。ただし肝斑治療には向かない

ピコスポットは、とくに真皮メラノサイトが異常に活性化することで起こるADM(後天性真皮メラノサイトーシス)の治療に効果的だと報告されています。
ピコスポットで真皮メラノサイトが破壊できればADMは完治し、再発はしないというデータもあります。
ピコ秒レーザーを低フルエンスで照射するピコトーニングなどではADMへの効果が見込めないため、ピコスポットがおすすめです。
また、ピコスポットによる肝斑治療も難しく、増悪または難治性白斑などが生じてしまう可能性が高いです。
「ただのシミなのか、肝斑なのか」がわからない場合、ピコスポットの施術は避けた方がいいでしょう。
ピコレーザーのコンビネーション治療の種類

ピコ秒レーザーを使う施術には「ピコトーニング」「ピコフラクショナル」「ピコスポット」の3つがあると解説しましたが、コンビネーション治療も同様に注目を集めているようです。
- ピコトーニング+ピコフラクショナル
- ピコスポット+ピコトーニング
ピコレーザーによるコンビネーション治療としては、これらの組み合わせが挙げられます。
一目立つシミには強めにスポット照射、くすみや色ムラが気になる顔には全体的にトーニング照射を行うことで、症状やお好みに合わせた施術が可能です。
ほかにも、顔全体にフラクショナル照射、色調が気になる部位にはトーニング照射を行うことで肌質改善やブライトニングが同時に目指せる、と謳っているクリニックも少なくありません。
ただし、これらの施術はあくまでも理論上の話。エビデンスには疑問が残りますし、コンビネーション治療に関する論文はほとんど見当たりませんでした。
そもそもピコトーニングやピコフラクショナルの施術には問題点も報告されており、肌の引き締め効果が見込めない場合や、肝斑が悪化してしまうケースも。
シミと肝斑が同時に現れている可能性や、シミだと思っていた部分が肝斑かもしれないという可能性を考えると、知識や技術が不十分なクリニックでコンビネーション治療を受けるのはおすすめできません。
ピコレーザーはあらゆる肌悩みに効果的!ただし注意点もある

ピコレーザーとは、ピコ秒(1兆分の1秒)で発振可能なレーザー機器。
- シミやくすみ、毛穴の開き、赤ら顔などに効果的なピコトーニング
- シミやたるみ、傷跡などに効果的なピコフラクショナル
- シミ、そばかす、ホクロ、ADMなどに効果的なピコスポット
上記3つのモードがあり、理論的にはコンビネーション治療で複数のお悩みを同時に改善することもできます。
ただし、ピコ秒レーザーによる治療はまだまだ新しい方法であり、とくにフラクショナルの場合は適切な照射出力や波長、集光方法もわかっていません。
「効果が現れた」という論文もあれば「症状が悪化してしまった」という論文もあるので、リスクが起こる可能性についても理解した上で治療に臨むことが大切です。
このサイトでは、マシンの導入を検討している医療関係者の方、レーザー治療や医療脱毛、IPL治療に興味がある方に向け、エビデンスに基づいた忖度のない情報を発信しています。
「マシン選びに困っている」「自分の肌悩みにどんな治療がいいのか知りたい」という方は、ぜひ他のページもご覧くださいね。